<歌詞和訳>There Is The Light That Never Goes Out – The Smiths 曲の解説と意味も
The Smiths – There Is The Light That Never Goes Out
ザ・スミス – ゼア・イズ・ザ・ライト・ザット・ネヴァー・ゴーズ・アウト
弱者の視点に立った歌詞が若者を中心に熱狂的に支持された、イギリスのロックバンド ザ・スミスの3rdアルバム「The Queen Is Dead」(1986年) に収録されている曲です。
「二階建てバスに衝突されても、君のそばで死ねるなら幸せ」というフレーズで有名な、ザ・スミスの中でも1,2を争う代表曲です。
バンド解散から5年後の1992年に、ベストアルバムのリリースに合わせてシングルとしてリリースされました。
歌詞の意味と解釈
タイトルの「ゼア・イズ・ア・ライト・ザット・ネバー・ゴーズ・アウト」を訳すと、"決して消えない光がある" となります。
一見力強いタイトルとは裏腹に、歌詞の内容は非常にナイーブです。
“決して消えない光" が何を指すのか、明確にはされておらず、歌詞も様々に解釈できます。
この曲は「死をも恍惚に変える、情熱的で甘美なラヴソング」とも「家族に疎まれ、愛する人と家出する同性愛者の歌」とも解釈されています。また、私が面白いと思ったのは「"ここではないどこか" を夢想する引きこもり青年の歌」という解釈です。
その解釈ですと、"決して消えない光" とは「一晩中消えない部屋の明かり」という事になります(この解釈の続きは、和訳の後にさせていただきます)。
歌詞と和訳
Written by Morrissey & Johnny Marr
Take me out tonight
Where there’s music and there’s people
And they’re young and aliveDriving in your car
I never never want to go home
Because I haven’t got one
Anymore
今夜僕を連れ出して。
若さと活気に溢れた
音楽と人々がいる場所へ
君の車でドライヴしよう
家になんて帰りたくない
だって僕にはもう、家なんてないんだ
Take me out tonight
Because I want to see people and I
Want to see lifeDriving in your car
Oh, please don’t drop me home
Because it’s not my home, it’s their
Home, and I’m welcome no more
今夜僕を連れ出して。
色々な人々に出会い、
人生を知りたいんだ
君の車でドライヴしよう
お願いだから家で降ろさないで
あれは僕の家じゃなく、奴らの家
もう僕を迎えてはくれない
And if a double-decker bus
Crashes into us
To die by your side
Is such a heavenly way to dieAnd if a ten-ton truck
Kills the both of us
To die by your side
Well, the pleasure – the privilege is mine
二階建てバスが
僕らに衝突したって
君のそばで死ねるなら
こんな素敵な死に方は無いさ
10トントラックが
僕ら二人を押しつぶしても
君のそばで死ねるなら
それは喜び、僕の特権
・double-decker bus ダブルデッカーバス。ロンドン市内を走る赤い二階建ての路線バスは「ダブルデッカー」と呼ばれています。
Take me out tonight
Take me anywhere, I don’t care
I don’t care, I don’t careAnd in the darkened underpass
I thought oh God, my chance has come at last
(but then a strange fear gripped me and I
Just couldn’t ask)
今夜僕を連れ出して
どこだっていい、そんなの構わない
構わない、構わない
暗がりのガード下で
僕はこう思った、神様、僕にもようやくチャンスが巡って来た
(だけどすぐに奇妙な恐怖に襲われ
僕は声も出せなかった)
Take me out tonight
Oh, take me anywhere, I don’t care
I don’t care, I don’t careDriving in your car
I never never want to go home
Because I haven’t got one, da…
Oh, I haven’t got one
今夜僕を連れ出して
どこだっていい、そんなの構わない
構わない、構わない
君の車でドライヴするんだ
絶対家には帰りたくない
だって僕には家なんてない
家なんてないんだ
And if a double-decker bus
Crashes into us
To die by your side
Is such a heavenly way to dieAnd if a ten-ton truck
Kills the both of us
To die by your side
Well, the pleasure – the privilege is mine
二階建てバスが
僕らに衝突したって
君のそばで死ねるなら
こんな素敵な死に方は無いさ
10トントラックが
僕ら二人を押しつぶしても
君のそばで死ねるなら
それは喜び、僕の特権
Oh, there is a light and it never goes out
There is a light and it never goes out(×8)
あぁ、決して消えない明かりが灯っている
決して消えない明かりが灯っている
The Smiths Meat Is Murder Tシャツ (L)
解説:解釈の追記
タイトルの “決して消える事のない光" を「引きこもり青年の部屋の明かりが一晩中灯っている様子」だと解釈して、ここでは訳しました。(もちろんこれは、たくさんある解釈の内の一つに過ぎません…)
曲のラストに繰り返される There is a light and it never goes out の意味深なフレーズは、歌詞で登場した「憧れの人とのドライヴや街の様子」が、すべて「夢想だった」事を意味しており、「現実では、青年(この歌詞の語り手)は一人部屋に籠っていた」(だから部屋の明かりは消えなかった)というオチのように思えます。
モリッシー自身も、成人しても親元を離れて自立する事なく、好きな音楽と詩に囲まれた生活をしていたといいます(成人男性が親と同居し続けるのは、当時のイギリスでは異様だったらしいです)。
そんなモリッシーの背景から想像を膨らませると、「決して消えない光」とは引きこもり青年の存在証明であり、創作活動そのものだと言ったらちょっと大袈裟でしょうか。
また Take me out tonight と言っている相手は人間ではなく、彼が愛する”音楽”や”文学”や”映画”だったとしたら。
そして、それらが彼を退屈な世界から “外へ連れ出してくれる" ものだとしたら。
それらの為に死ぬことや、それらと共に死ぬことが「本望である」と言うならば。
すべて意味が通るような気がします。
モリッシーの生き方と音楽について
1983年から2010年までのインタビュー集
収録アルバム
アルバムジャケットを押すとアマゾンのページへ移動します。
The Queen Is Dead (1986年)
ザ・スミスの最高傑作と呼ばれる事が多い3rdアルバム。イギリスNME誌の「All Time Greatest Album500」では1位に輝いています。モリッシーの詞も、サウンドもバラエティ豊かで、バンドサウンドの迫力も従来より増しています。
2017年に3CD+1DVDのDeluxe Editionがリリースされました。
The World Won’t Listen (1987年)
コンピレーション「Hatful Of Hollow」(1984年) に続く、スミス中期のシングル+B面を集めたコンピレーション盤。「世界は聴きゃしない」という皮肉と自虐がこもったタイトルも含め、1枚のアルバムとして聴いても統一感があります。
The Sound Of The Smiths(2008年)
オリジナルアルバム4枚に対し、コンピレーションはこちらを含め計8枚出ているザ・スミス。こちらは全キャリアから代表曲を網羅した決定盤といえる内容(メンバーの写真がジャケットになるのは初)。さらに、Disc2にはレアなカップリング曲『Jeane』やライヴバージョンなど、コアなファンにも訴えかける内容となっています。