【ジャンル解説】ポストハードコア(Post-Hardcore)
音楽ジャンルを歴史と一緒にわかりやすくまとめました。
Post-Hardcore:ポスト・ハードコアとは何か
始まり:1980年代後半アメリカ
詳細解説
ポストハードコアの起源は、大きく2つに分けられる。1つは、ハードコアシーン出身のバンドがテンポを落として歌やメロディ、リズムに独自性を持たせたもの(フガジやジョー・ボックスなど)。
もう1つは、ハードコアシーンとの繋がりは薄いものの過激な音楽性と実験性によってポストハードコアに分類されたもの(ノイズロックやジャンクロックとも呼ばれた。ビッグ・ブラックやヘルメットなど)である。
USハードコアの重要人物イアン・マッケイのインディーレーベル「ディスコード・レコード」は地元ワシントンD.C.のパンクバンドを紹介するという姿勢のもとに運営され、イアン・マッケイのバンド フガジは、ファンとの垣根の無いコミュニティー形成、とことんまでレコード代・ライヴチケット代を安くするという活動理念と、ストレートエッジの姿勢を貫き、アメリカ中のインディーバンドから尊敬される存在となった。
サウンドにおいても、シンプルな機材を用いながら、曲構成やバンドアンサンブルで独自性を打ち出したサウンドで、他のハードコアバンドとは一線を画していた。そのようなフガジやディスコードのバンドに追随するかのように、ハードコアの熱量を持ったまま、メロディやサウンドに変化を持たせるバンドが登場し、ポストハードコアという名称が定着したという。
一方、ニューヨークパンク以降の実験的な音楽シーン(ノイズロックやノーウェイヴと呼ばれる)から登場したスティーヴ・アルビニ率いるビッグ・ブラックや、オルタナティヴロックと関わりの深いハスカー・ドゥやシュガー、メタルともハードコアとも違うヘヴィサウンドが特徴のヘルメットなど「ジャンル分けできない激しい音のバンド」もポストハードコアと呼ばれる事が多い。
なお、外見においては、ハードコアパンクのマッチョな姿から、ややナード(文系オタク)寄りになっている傾向がある。
ポストハードコアの分岐
ポストハードコアは、歌に重点が置かれるエモーショナル・ハードコアやスクリーモ、アンサンブルを追求したマスロック(およびマスコア)、メタルと融合したメタルコア、実験精神を引き継いでロック以外のものを目指したポストロックなどの派生ジャンルを展開していく。
ポストハードコアを、それら派生ジャンルとハードコアの”つなぎ目”的なものと定義する場合と、派生ジャンル全て含めてポストハードコアと呼ぶ場合がある。後者の場合は非常に幅を持った言葉になる。
ポストハードコアがそれだけ幅広い意味を持つのも、アメリカにおける”ハードコアパンクのシーン”が、オルタナ/インディーロックに大きな影響を与えた存在だといえる。
1970年代末、パンクロックの影響からニューウェーブが登場したように、ハードコアの影響からポストハードコアが誕生したといえる(ハードコアパンクの思想的な影響はハードコアパンクの項目を参照)。
その為か、ポストハードコアのバンドが登場したのは、ハードコアがシーンとして定着したアメリカ(と日本)にほぼ限定されている。
代表的なアーティスト
※エモ、スクリーモ、マスロックに該当するポストハードコアはそれぞれのジャンルの欄に掲載
・フガジ(Fugazi 活動期間:1987-2003)
・ドライヴ・ライク・ジーヒュー(Drive Like Jehu 活動期間:1990-95)
・ビッグ・ブラック(Big Black 活動期間:1981-87)
・ハスカー・ドゥ(Husker Du 活動期間:1979-)
・ヘルメット(Helmet 活動期間:1989-98, 2004-)
・シュガー(Sugar 活動期間:1992-95)
・キュー・アンド・ノット・ユー(Q and Not U 活動期間:1989-2005)
動画(全部で7作品)
音楽ジャンル解説の目次はコチラ
ポストハードコアとは、アメリカのハードコアパンクから影響を受けて登場したインディーバンド群を指す。ポスト(Post)とは”後の”を意味する。
ハードコア譲りの熱量と、無駄をそぎ落としたサウンド(楽器編成、機材、録音など)、反商業主義の姿勢を特徴とする。
90年代~2000年代にかけて様々な派生ジャンルを生んだ(エモコア、マスロック、メタルコアなど)。それら派生ジャンルも含め”ポストハードコア”と括る場合もある為、定義があいまいになりがちである。