【ジャンル解説】ドゥームメタル(Doom Metal)/スラッジ(Sludge)
音楽ジャンルを歴史と一緒にわかりやすくまとめました。
Doom Metal:ドゥームメタルとは何か
始まり:1980年代後半
詳細解説
ドゥームメタルの起源は、ヘヴィメタルバンドのブラック・サバスが1970年にリリースした『黒い安息日』だと言われている。ブラックサバス自身、もともとはブルースやジャズを使って(まだハードロックもメタルも無かった)人を怖がらせる音楽を作る、というコンセプトをもっていたという。
世界最速のバンドといわれたナパーム・デスのメンバー、リー・ドリアンは世界最遅のバンドを目指してドゥームメタルバンドのカテドラルを結成したという。
80年代から90年代にかけて、アンダーグラウンドながら徐々に人気を集めるジャンルとなり、多数のサブジャンルを生むこととなる。
従来のドゥームメタルをトラディショナル・ドゥームと呼び、ファンタジーやゴシック要素を増したエピック・ドゥーム、ミニマムミュージックやドローンと呼ばれる持続音を取り入れたドローン・ドゥームや、デス・ドゥーム、ブラック・ドゥームなどがある。
Sludge:スラッジとは何か
スラッジの起源もブラックサバスだと言われるが、こちらはアメリカのハードコアパンクの影響も強く(ハードコアパンクのブラック・フラッグは極端にスローテンポな楽曲も演奏していた)、多くがアメリカから登場している。
(なんとなく”グランジ”に語感が似ているが、影響元も似ていると思われる)。
また、メルヴィンズのような実験性・前衛性(または悪趣味)が濃いものをスラッジと呼ぶ傾向があり、例えば、サンのようにもはや音楽と言えないレベルにまで極端に重く・遅い音を出すバンドもいる。
スラッジはドゥームメタルのサブジャンルとして扱われる事もあれば、別ジャンルとして扱われる事もあり、明確な区分はされない事も多い。
ドゥームメタル、ストーナーロック、スラッジ、それぞれの違い
ドゥームメタル、ストーナーロック、スラッジは、愛好者はどれも好む傾向が強いため、まとめて紹介される事が多い。あえて、区別するならば下記のようになる(あくまで個人的見解です)。
・ドゥームメタルはメタルらしい粘っこいリフ、重々しく厭世的な世界観。ブラックサバスのブラックサバスに比較的忠実。歌がしっかりある場合が多い。
・ストーナーロックはデザートロックとも呼ばれるように、乾いた重さ。サイケやガレージロック、ブルースの影響が濃い。ドラッグ(主にマリファナ)をテーマにした、享楽的な世界観。
・スラッジは、メタルもパンクもサザンロックもポストロックもアンビエントもなんでもアリだが、テクニカルなバンドは含まれない事が多い。
代表的なアーティスト
・トラブル(Trouble 活動期間:1979-)
・キャンドルマス(Candlemass 活動期間:1984-94, 1997-)
・カテドラル(Cathedral 活動期間:1989-2013)
・パラダイス・ロスト(Paradise Lost 活動期間:1988-)
・ニューロシス(Neurosis 活動期間:1985-)※アヴァンギャルドメタル等とも呼ばれる
【スラッジ】
・アイヘイトゴッド(Eyehategod 活動期間:1988-)
・スリープ(Sleep 活動期間:1990-1998, 2009-)
・エレクトリック・ウィザード(Electric Wizard 活動期間:1993-)
・アース(Earth 活動期間:1989-97, 2003-)※アンビエントメタル、アヴァンギャルドメタル等とも呼ばれる
・サン(Sunn O))) 活動期間:1998-)
動画(全部で11作品)
ブラックサバスの『ブラックサバス(黒い安息日)』。すべてはここから始まった?
音楽ジャンル解説の目次はコチラ
ドゥームメタルとは、ヘヴィメタルの1ジャンルで、スローテンポでヘヴィなサウンド、仰々しいボーカルを特徴としている。
ドゥーム(Doom=破滅)の名の通り、終末思想や破滅願望、オカルトをテーマに掲げた退廃的な世界観をもっている。
スラッジ(スラッジコアまたはスラッジメタルとも呼ばれる)も、ドゥームメタルと同様、遅さや重さを強調したサウンドである(スラッジ:sludge=泥沼)。ドゥームメタルの破滅に対し、”病んだ”(イカレた)世界観が特徴である。
音楽性も混とんとしており、メタル、パンク、サザンロック、アンビエントまでをも消化した、多様性を持ったサウンドである。