【ジャンル解説】グランジ(Grunge)/ポストグランジ(Post-Grunge)
音楽ジャンルを歴史と一緒にわかりやすくまとめました。
Grunge:グランジとは何か
始まり:1990年代初頭アメリカ(起源は80年代)
詳細解説
グランジの語源は「grungy」(=うす汚い)であり、グランジの始祖というべきバンド マッドハニーのマーク・アームが自身のバンド(当時はグリーン・リバー)の形容として”Pure grunge! Pure noise! Pure shit!”と形容した事が始まりとされる。
その後、サブポップレーベル(マッドハニー、ニルヴァーナらが所属したシアトルのインディーレーベル)が所属バンドの紹介に”Grunge”という言葉を使用するようになったという。
ニルヴァーナの成功は”グランジ旋風”と呼ばれるほど、欧米のポップミュージックシーンに影響を及ぼし、様々な”グランジのようなバンド”が登場した。
グランジバンドを定義する際は、「原点となるシアトルシーンのバンドだけ」を指す場合と、スマッシング・パンプキンズやストーン・テンプル・パイロッツなど「近いサウンドの同時期のバンドも含める」場合があり、一般的には後者が多い。
個人的には、色々な音楽要素が乱雑に混じったシアトルのバンドだけが”グランジ”という表現にぴったりくると思われる(ページ下の埋め込み動画を参照)。
また、グランジの陰鬱な佇まいや、汚らしい恰好(伸ばし放題の髪、ボロボロのジーンズや汚れたスニーカー、着古したネルシャツやカーディガン)は、当時流行していた”グラムメタル”(ヘアメタル)が演じるロックスター像への反発だとも言われる。しかし、グランジが流行ってからはその薄汚い恰好さえ、”グランジファッション”と呼ばれ、もてはやされたという。
なお、ニルヴァーナを始めとしたグランジバンドのミュージシャンは、両親の離婚や貧困など、少年期・青年期に苦境を味わったという。グランジの気が滅入るような歌詞は、そのようなトラウマ的経験がベースになっているとも言われる(例えば、自動車整備工とウェイトレスの間に生まれたカート・コバーンは幼少期に両親が離婚し、親族の間をたらい回しにされたという。帰って来ない両親の様子を『Sliver』という曲では歌われている)。
また、ドラッグ中毒に陥るアーティストも多く、自殺したカート・コバーンのみならず、アリス・イン・チェインズのレイン・ステイリー(オーバードーズで死去)や、生前から度々中毒に悩まされたというサウンドガーデンのクリス・コーネル(2017年に自殺)を始め、その数は多い。
94年のカートの自殺により、グランジの勢いは急速に衰えていった(そもそもメディアが持ち上げ過ぎたともいわれる)。
Post-Grunge:ポストグランジとは何か
ポストグランジとは、グランジの中でも特に売れたニルヴァーナやパールジャムの影響下にあるバンドを指す言葉。
ポストグランジは、グランジが持っていた過激さやアクの強さは見られず、聴き易いスタンダードなハードロック寄りの音楽であることが多い。その為、ミュージシャンや熱心なグランジリスナーからの評価は高くないが、クリードやニッケルバックのように本家のグランジを凌ぐほどのセールスを上げているバンドもいる。
それらは、グランジの上辺をなぞっただけの薄い音楽という否定的な見方もされる。しかし、より多くの人が共感できる歌詞や、心に響くブルースロックやカントリーの要素、プロによるモダンな音作りによって人気を集めている。
代表的なアーティスト
・ニルヴァーナ(Nirvana 活動期間:1987-94)
・マッドハニー(Mudhoney 活動期間:1988-)
・サウンドガーデン(Soundgarden 活動期間:1984-97, 2010-)
・メルヴィンズ(Melvins 活動期間:1983-)
・タッド(Tad 活動期間:1988-99)
・アリス・イン・チェインズ(Alice in Chains 活動期間:1987-2002, 2005-)
・パールジャム(Pearljam 活動期間:1990-)
・スクリーミング・トゥリーズ(Screaming Trees 活動期間:1985-2000)
【同時期の周辺バンド】(グランジに含まれる場合もある)
・ソニック・ユース(Sonic Youth 活動期間:1981-2011)
・スマッシング・パンプキンズ(The Smashing Pumpkins 活動期間:1988-2000, 2006-)
・ホール(Hole 活動期間:1989-2002, 2010-12)
・ストーン・テンプル・パイロッツ(Stone Temple Pilots 活動期間:1989-2002, 2008-)
【ポスト・グランジ】
・ブッシュ(Bush 活動期間:1992-2002, 2009-)
・ライヴ(Live 活動期間:1988-2009, 2011-)
・クリード(Creed 活動期間:1995-2004, 2009-)
・パドル・オブ・マッド(Puddle of Mudd 活動期間:1991-)
・ニッケルバック(Nickelback 活動期間:1995-)
・3ドアーズダウン(3 Doors Down 活動期間:1996-)
動画(全部で18作品)
音楽ジャンル解説の目次はコチラ
グランジとは、1990年頃にアメリカ シアトルのインディーロックシーンから発生したロックのムーブメントで、関連するバンドやその音楽性を指す言葉でもある。
「grungy」(=うす汚い)が語源であり、当時流行していた華やかに装飾されたポップミュージックとは対照的な、陰鬱で自虐的な世界観が特徴のロックである。
グランジのサウンドを一言で表現すると、パンクロックのラフなビート感と、ヘヴィメタルの重さが融合したもの、と言える。また、アメリカのインディーロックの影響を強く感じる荒い音作りも特徴である。
静かなパートとノイジーなパート、メロディアスな歌と感情的なシャウトという対極な要素が1つの曲で展開するのも、グランジの曲によくみられる傾向である。
ニルヴァーナのアルバム「Nevermind」(1991年リリース)の商業的な成功の後、グランジはニルヴァーナ周辺のバンドを表すジャンル名として頻繁に使われた。しかし、これはレコード会社や音楽メディアがバンドを売り出す際に付けたものであり、アーティスト側はグランジという言葉に否定的だったといわれる。