<歌詞和訳>21st Century Schizoid Man(21世紀のスキッツォイドマン) – King Crimson 曲の解説と意味も
King Crimson – 21st Century Schizoid Man
キング・クリムゾン – 21st・センチュリー・スキッツォイド・マン(邦題:21世紀のスキッツォイドマン)
プログレッシヴ・ロックを代表するイギリスのバンド キング・クリムゾンの1stアルバム「クリムゾン・キングの宮殿」(1969年)に収録されている曲です。
ダイナミックなメインリフと、中盤のジャズのような緊張感あるインプロヴィゼーション(即興演奏)が特徴的な、ロック史に残る名曲です。
中盤のインストゥルメンタル・セクションには「Mirrors」というタイトルが付いている為、曲名は「21st Century Schizoid Man(Including “Mirrors")」とも表記されます。
(アルバムリリース当時、5曲という収録曲は少なすぎたため、曲に副題を付けたそうです)
なお、アルバムのジャケットは21世紀のスキッツォイドマンをモチーフにしたものと思いがちですが、この絵をメンバーが初めて見たのはこの曲を録音している最中であり、曲と絵のイメージが一致していたのは全くの偶然だったそうです。
(この絵は、作者バリー・バッドバーの自画像を発展させたものだそうです。彼は若干21歳で心臓発作により急死しました)
邦題をめぐって
この曲には「21世紀の精神異常者」という邦題が付いていましたが、レコ倫の自主規制により1990年代に「21世紀のスキッツォイドマン」へと改められました。
「Schizoid」という言葉は「精神分裂症」と訳され、精神医学では「統合失調症」を指すそうです。(スキゾイドパーソナリティ障害とも呼ばれる。その特徴として「他者への無関心・孤立」や「感情の乏しさ」「妄想癖」などがある。また、日本では2002年に日本精神神経学会が「精神分裂病」の名称を「総合失調症」へと正式に変更しました)。
その点を考えると、「スキッツォイドマン=精神異常者」と訳すのは、(差別や偏見を招くという観点からも)正しいとは言えないかもしれません。
ただし、この曲の「Schizoid man」が指しているのは精神病患者そのものではなく、「アタマのオカシな人」の婉曲表現と捉えるのが自然で、旧邦題の「精神異常者」というパンチの効いた邦題は、意図をくみ取った秀逸な邦題と言えます。(つまり、英語の時点で差別的な表現となっており、邦題はそれを正しく訳していたといえます)
歌詞の意味と解釈
初期のキング・クリムゾンには作詞専門のメンバー ピート・シンフィールドが在籍しており、この曲の詞も彼によるものです。
当時起こっていたベトナム戦争の影響といわれる暗くグロテスクな歌詞は、重厚かつ分裂症的な曲調に合っていますが、強烈な"政治的メッセージ“が込められているとも解釈できます。
なぜなら、この歌詞は「“アタマのオカシな権力者"が世界を混乱と恐怖に陥れていく」様子を描いたものと読め、21世紀になって20数年たった今、その様子は"現実に近い風景"として受け取れるからです。
この歌詞は(特に日本では)曲に添えられた"精神異常者の妄想"と見られていたかもしれませんが、近年の世界情勢を思えば「メッセージソングとして改めて評価されるべき」という気がします。
歌詞と和訳
Written by Robert Fripp, Michael Giles, Greg Lake, Ian McDonald & Peter Sinfield
Cat’s foot, iron claw
Neuro-surgeons scream for more
At paranoia’s poison door
Twenty-first century schizoid man
猫の前足、鉄の爪
脳神経外科医は「もっとだ!」と叫ぶ
妄想から生まれる猛毒のドアに向かって。
21世紀のスキッツォイドマン(キ〇ガイ権力者)
・neuro-surgeon 脳神経外科医
・paranoia パラノイア、偏執病、妄想症
※cat’s footとiron clawはベトナム戦争視点で解釈すると「弱者と強者の対比」と考えられます
Blood rack, barbed wire
Politicians’ funeral pyre
Innocents raped with napalm fire
Twenty-first century schizoid man
血塗られた拷問台、有刺鉄線
政治家を火葬する薪
罪なき者たちはナパームの炎にレ〇プされる。
21世紀のスキッツォイドマン(キ〇ガイ権力者)
・rack 棚、拷問台
・barbed wire 有刺鉄線
・napalm ナパーム、ナパーム弾、第二次世界大戦中に開発された油脂制焼夷弾
Death seed, blind man’s greed
Poets’ starving, children bleed
Nothing he’s got he really needs
Twenty-first century schizoid man
死を生む種、己を見失った者の尽き無い欲望
詩人たちは飢え死にし、子供たちは血を流す
そして彼が欲しいものは何一つ得られない。
21世紀のスキッツォイドマン(キ〇ガイ権力者)
・greed 強欲、貪欲
・starve 飢える、餓死する、切望する
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収録アルバム
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In The Court Of The Crimson King(邦題:クリムゾン・キングの宮殿 1969年)
キング・クリムゾンの1stアルバムで、プログレッシヴロックの原点にして頂点とも評される、ロック史に残る名盤。ロックファンなら誰もが聴いておくべき作品ですし、個人的にも名曲揃いだと思いますが、4曲目『Moon Child』後半の抽象的なパートなどは正直聴きにくいです(笑)
Sleepless: The Concise King Crimson(1993年)
1993年にリリースされたベストアルバム。1stアルバム~再結成後のアルバム「Three Of a Perfect Pair」(1984年)までの楽曲を収録。全アルバムを網羅しているわけではなく、代表作「クリムゾン・キングの宮殿」「レッド」「ディシプリン」の割合が多い一方で、「太陽と戦慄」からの収録は無し。名曲『Starless』は後半部分がカットされていたりと、不満はある内容ですが、キング・クリムゾンの雰囲気を軽くなぞるにはよいアルバムかと思います。
The Condensed 21st Century Guide to King Crimson(濃縮キング・クリムゾン〜ベスト・オブ・キング・クリムゾン1969-2003 2006年)
タイトル通り1969年「クリムゾン・キング~」から2003年「The Power To Believe」までの楽曲を収録した2枚組ベストアルバム。キング・クリムゾンといえば1974年のアルバム「レッド」までの楽曲ばかり取り上げられがちですが、再結成以降の楽曲も2枚目でしっかり聴けます。