【ジャンル解説】エモーショナルハードコア/エモ/スクリーモ
音楽ジャンルを歴史と一緒にわかりやすくまとめました。
Emotional Hardcore:エモーショナル・ハードコアとは何か
始まり:1990年代アメリカ
詳細解説
1980年代中盤には、アメリカで先駆けとなるバンドが存在していたが、”エモコア”の言葉が浸透するのは90年代後半からで、2000年代には"エモ"と呼ぶのが一般的になる。
エモコアと言う言葉が初めて使われたのは1986年、ワシントンD.C.のハードコア/ポストハードコアパンクバンドに対し、雑誌が”emo-core”と表現した事だと言われる(それに対し、DCハードコアの当事者イアン・マッケイは拒否反応を示したという)。
このようにエモコアは元々、ポストハードコアパンクのバンドの形容として付けられた言葉だが、言葉が広まるとともに意味があいまいになっていく。
メロディアスでハードなギターサウンド、思春期がかった感傷的な歌を歌うバンドを指してエモと呼ぶ場合が多くなっていく。
その為、ハードコアパンクが持っていたマッチョイズムとは対極の、小さめのTシャツにジーパンといった地味なルックスのバンドも増え、「泣き虫のパンク」等と揶揄される事もあったと言う。その傾向は2000年前後にジミー・イート・ワールドやダッシュボード・コンフェッショナルといったバンドが商業的に成功する事で、強まっていく。
2000年以降”エモ”の呼称が浸透し、マイ・ケミカル・ロマンスやフォール・アウト・ボーイ、パラモアなど、見た目が派手なバンドが”エモ”に分類され大きなセールスを上げる。
エモコアから”エモ”の呼称になったのは、単に省略されただけなのか、意図的に除いた(ハードコアから決別した)のかは定かではない。いずれにせよ、近年のエモはハードコアもパンク要素も無くなった、若者にとって最も身近なロックのジャンルだと言える。
さらに、マイ・ケミカル・ロマンスのような、アイライナーなどのゴスメイクや、黒い服装、派手なメッシュやピアッシング、タトゥーが、エモファッションと呼ばれている(日本のヴィジュアル系にも通じるところがある)。
Screamo:スクリーモとは何か
スクリーモとは、エモをベースに、より音のダイナミズムと叫び声(Scream + Emo)が強調されたジャンルである。
元々(90年代)は絶叫系のアンダーグラウンドなものが主流だったが、2000年以降は絶叫と歌を使い分けるものが主流となり、サーズデイやザ・ユーズドなどのバンドが、商業的なヒットを飛ばした。
しかし、近年ではよりメタルやハードコア色が強いものも、スクリーモとされるようになり、メタルコアに近いものも存在する。
代表的なアーティスト
【ポストハードコア寄りのエモコア】※インディー寄りのサウンド
・ライツ・オブ・スプリング(Rites of Spring 活動期間:1984-86)
・ジョーボックス(Jawbox 活動期間:1989-97, 2009)
・サニーデイ・リアル・エステイト(Sunny Day Real Estate 活動期間:1992-95, 1997-2001, 2009-13)
・アット・ザ・ドライヴ・イン(At The Drive-In 活動期間:1993-2001, 2011-12, 2016-)
・ホット・ウォーター・ミュージック(Hot Water Music 活動期間:1993-96, 1997-2006, 2008-)
・ミネラル(Mineral 活動期間:1994-98, 2014-)
・カーシヴ(Cursive 活動期間:1995-)
【パワーポップ/ポップパンク寄りのエモコア、エモ】※メジャー寄りのサウンドで人気を博す。ヴィジュアルに凝ったバンドも多い。
・ゲット・アップ・キッズ(The Get Up Kids 活動期間:1995-2005, 2008-)
・ジミー・イート・ワールド(Jimmy Eat World 活動期間:1993-)
・ダッシュボード・コンフェッショナル(Dashboard Confessional 活動期間:1999-)
・マイ・ケミカル・ロマンス(My Chemical Romance 活動期間:2001-2013)
・フォールアウト・ボーイ(Fall Out Boy 活動期間:2001-09, 2013-)
・パニック! アット・ザ・ディスコ(Panic! at the Disco 活動期間:2003-)
・パラモア(Paramore 活動期間:2004-)
【スクリーモ】
・サーズデイ(Thursday 活動期間:1997-2012)
・ザ・ユーズド(The Used 活動期間:2001-)
・フューネラル・フォー・ア・フレンド(Funeral for a Friend 活動期間:2001-)
・シルヴァースタイン(Silverstein 活動期間:2000-)
動画(全部で18作品)
音楽ジャンル解説の目次はコチラ
エモーショナルハードコアとは、アメリカのハードコアパンクの影響下にあるロックで、歌やギターを中心に感情の抑揚を激しく表現したロックである。"エモコア“と略される事も多い。
近年では、より若者向けの歌に特化したものを”エモ”と呼ぶ。エモは、メタルともパンクとも一味違う激しいロックとして人気を集めている。
さらに、エモ(Emo=発音は”イーモゥ”)という言葉は、「過度に感情的な様子」を表す言葉(スラング)として若者中心に定着している。Emoには繊細さや女々しさも含まれ、化粧やゴス、バイセクシャルをテーマにしたファッションがエモファッションとして定着しつつある。
また、日本でも”エモい”という表現が使われる事もある(日本の場合は”理論的の反対”の意味で使われる事が多い)。