<歌詞和訳>Time – Pink Floyd 曲の解説と意味も
Pink Floyd – Time
ピンク・フロイド – タイム
イギリスのプログレッシヴ・ロックバンド ピンク・フロイドの8thアルバム「The Dark Side Of The Moon」(邦題:狂気 1973年) に収録されている曲です。
アメリカでは1974年2月にシングルとしてリリースされました。
時計のアラームが鳴り響くイントロが印象的ですが、これは歌詞の内容と同じく、限られた時間を無為に過ごす事への"警告"のように聴こえます。
歌詞の意味と解釈
「人は時間を無駄にしてしまう」「何かを待ち続けて時間を無為に過ごす」「そしてそれは失ってから気付く」
そういった、戒めともいえる普遍的な内容が書かれた歌詞です。
達観した歌詞ですが、これを書いたロジャー・ウォーターズはまだ29歳だったそうです。
歌詞と和訳
Written by Roger Waters, Richard Wright, David Gilmour & Nick Mason
Ticking away the moments that make up a dull day
You fritter and waste the hours in an offhand way
Kicking around on a piece of ground in your hometown
Waiting for someone or something to show you the way
刻まれていく時が、退屈な一日に変わる
君は何気なく、時間を無駄に過ごす
故郷の狭い土地をうろついて
道を指し示してくれる何かを待っている
・ticking away (カチカチと時を)刻む、時が過ぎる
・dull 鈍い、さえない、退屈な
・fritter 浪費する、細かく砕く
・in an offhand way そっけなく、即座の
・kick around 粗末に扱う、さまよう、うろつき回る
Tired of lying in the sunshine, staying home to watch the rain
You are young and life is long and there is time to kill today
And then one day you find ten years have got behind you
No one told you when to run, you missed the starting gun
日差しの下で寝そべるのにも飽きて、家の中で雨を見つめている。
君は若く、先はまだ長い、今日を無駄にするゆとりもある。
でもある日気付く、10年の年月が過ぎ
“今がその時だ"と教えてくれる人はおらず、君はスタートの合図を聞き逃したのだ、と
And you run, and you run to catch up with the sun, but it’s sinking
Racing around to come up behind you again
The sun is the same in a relative way, but you’re older
Shorter of breath, and one day closer to death
そして君は走る、太陽に追いつこうと走る、でも陽は沈み
再び背後から現れ、君を急き立てる。
相対的に見て太陽は変わらないまま、君だけが老いていく
息は切れ易くなり、ある日、死が迫っている
・relative 比較上の、相対的な、身内、関連のある
Every year is getting shorter, never seem to find the time
Plans that either come to naught or half a page of scribbled lines
Hanging on in quiet desperation is the English way
The time is gone, the song is over, thought I’d something more to say
年を追う毎に一年は短くなり、"その時"は見つかりそうもない
計画は失敗に終わるか、ページの半分ほどに書かれた落書きの線となる。
自棄を静かに耐え忍ぶ、それがイギリス流というもの
時は過ぎ 歌は終わる、もっと言いたい事があったはずなのに
・come to naught ダメにする、失敗に終わる
・scribble ぞんざいに書く、落書きをする、走り書き
・hang on しがみつく、頑張り続ける、長引く
・desperation 自暴自棄、やけくそ
Home, home again
I like to be here when I can
And when I come home cold and tired
It’s good to warm my bones beside the fire
Far away across the field
The tolling of the iron bell
Calls the faithful to their knees
To hear the softly spoken magic spells
家に、再び家に
ここにいたい、できる限り。
凍え、疲れ果てて家に戻れば
焚火のそばで芯まで温まろう。
広野の遥か向こうで
<死を告げる>鉄の鐘が鳴り響く。
ひざまずく信者達に
そっと唱えられた魔法の言葉を聴かせる為に
・toll 鐘が鳴る、(人の死などを)鐘を鳴らして伝える、通行料、損失
・the faithful 忠実な信者たち
Pink Floyd The Dark Side Of The Moon Tシャツ
収録アルバム
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Dark Side Of The Moon(邦題:狂気 1973年)
全世界で5,000万枚以上のセールスを記録していると言われるピンク・フロイド最大のヒット作で、ロジャー・ウォーターズが主導して作り上げたコンセプトアルバムとなっています。
30周年記念のSACDマルチチャンネル盤や、2011年のデラックスエディション、ボックスセットもリリースされています。
Echoes:The Best Of Pink Floyd(邦題:エコーズ~啓示 2001年)
2枚組のベストアルバム。シド・バレット時代、ロジャー・ウォーターズ時代、デヴィッド・ギルモア時代、それぞれから万遍なく集められています。
The Best Of Pink Floyd: A Foot In The Door(邦題:百花繚乱 2011年)
名盤と呼ばれる「狂気」「炎」「ザ・ウォール」を中心にセレクトされた、16曲収録のベストアルバム。入門に最適です。
タイトルの"ドアに足を入れる"というのは「付き合いの取っ掛かりを掴む」という意味だそうです。
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ピンバック & トラックバック一覧
[…] 中学生の頃、モヤモヤして眠れない日が多くて、布団の中でイヤホンで好きな音楽を聞いていました。なんとなくカッコいいという理由で洋楽を聞くことが多く、特にプログレッシブロックのような長尺の音楽を聞くことが多かったです。お気に入りはPink Floydの狂気で、人間の内面に潜む狂気をアルバムで描き出すというコンセプトが中学生の僕に大ヒットして、繰り返し聞いていました。アルバムの内容をしっかり聞くというより、断片的に聞き取れる単語や、うろ覚えの歌詞を思い出しながら、まどろみの中で空想するための触媒のような使い方をしていました。和訳を読んでも歌詞の意味はよくわかりませんでしたが、なんと無く鬱屈とした自身の気持ちと波長が合う気がして、繰り返し聞いていました。当時は未来が永遠に続くとしか思えなかったので、Timeの歌詞はどこか人ごとでした。大人になった今では、構成のあざとさが鼻についてしまうことや、単純に自分が忙しいことが原因で、当時ほど『狂気』を集中して聞けなくなってしまいました。漠然とした不安を抱えながら、考える時間はいくらでもあったあの頃だったからこそ、このアルバムに入りこめたのでしょう。決して明るい思い出ではないですが、あの頃に何度も『狂気』を聞いていたことは、僕の音楽の原体験としてずっと残り続けると思います。 […]